手付金とは
手付金とは、不動産の売買契約を結ぶ際に買主から売主へ支払われるお金です。契約が成立したことを示す証拠としての意味(証約手付)があり、さらに、一定の条件下で契約を解除できる「解約手付」としての性質も持ちます。民法では、手付が交付された場合は当事者の別段の意思表示がない限り、解約手付と推定されます。
手付金は売買代金の一部として扱われ、最終的な代金の支払い(残金決済)の際に売買代金に充当されます。
解約手付による解除のしくみ
解約手付による解除とは、契約の履行に着手するまでの間であれば、手付金を使って、一方的に契約を解除できる仕組みです。
- 買主から解除する場合:支払った手付金を放棄する(返還を請求しない)
- 売主から解除する場合:受け取った手付金の倍額を買主に支払う(手付倍返し)
民法上は相手方が契約の履行に着手した後は手付による解除はできません。しかし、実務では、トラブルを避けるため、売買契約書に手付解除の期日(例:契約から○週間後、または、金融機関のローン承認の日まで)を具体的に定めるのが一般的です。
手付金の相場と設定の考え方
手付金の額は法律上の決まりはなく、当事者間の合意で決まります。実務では、売買代金の5〜10%程度とされることが多く、物件の金額が小さい場合は数十万円〜100万円程度に設定する例もあります。
ただし、売主が不動産会社(宅建業者)の場合は宅地建物取引業法によって、手付金の額が売買代金の20%を超えてはならないと定められています。売主が個人の場合はこの制限はありませんが、極端に高い設定は買主の負担となり、契約が進みにくくなります。
手付金の額が低すぎると、買主が気軽に契約を解除してしまうリスクがあります。売主としては、解除されにくく、買主にとっても無理のない額をバランスよく設定することが大切です。
手付金を受け取るときの注意点
- 手付金の額と解除できる期日を契約書に明記する
- 手付金を受け取った際は領収書を発行する
- 売主が手付金を倍返しして解除する場合、買主の損害(ローンの手続費用など)には、別途の請求が生じることがある
- 手付金は契約が履行されれば、売買代金に充当されるため、売主の「収入」は売却益の計算に含まれる
なお、手付金は契約時に現金や振込で受け取ります。大きな金額のため、受け渡しの方法は不動産会社と確認しましょう。
手付解除と違約金の違い
手付解除は「契約を解除する権利」を行使する手段です。一方、違約金は契約に違反した場合に支払う賠償金です。契約の履行に着手した後に売主または買主が契約に違反して解除した場合は違約金(売買代金の10〜20%程度とされることが多い)を請求される場合があります。
手付解除の期日を過ぎると、手付金の放棄では、解除できなくなるのが一般的です。解除の可能性がある場合は契約書の期日と金額をよく確認しておきましょう。詳しくは、手付金と手付解除、契約の解除と違約金の項目もご覧ください。
モデルケース:手付解除が問題になった例(イメージ)
売買代金3,000万円の物件で手付金150万円(代金の5%)を受け取って、契約を結んだとします。契約書には、「手付解除は契約から2週間以内」と定められていました。
ところが契約から1か月後に買主が「別の物件を購入したいので、契約をやめたい」と申し出ました。この時点で手付解除の期日は過ぎており、売主がすでに引っ越しの準備に着手していたため、買主は手付金の放棄だけでは、解除できません。契約違反による解除とみなされ、違約金(代金の10%など)の請求対象になる場合があります。
反対に売主側から「もっと高く買う人が現れた」として、期日内に手付金の倍額(300万円)を支払って、解除することも法的には可能です。ただし、それによって、買主に生じた損害(引っ越し費用の準備など)をめぐって、争いになることもあります。手付解除の期日と違約金の条項は契約前に必ず確認しましょう。