手付解除の仕組み
手付解除は売買契約の後、一定の期間内であれば、手付金を利用して、一方的に契約を解除できる仕組みです。民法第557条に定められており、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を買主に償還することで、契約を解除できます。
この制度は契約後にやむを得ない事情が生じた場合に当事者が一定の負担(手付の放棄や倍返し)で契約から離脱できるようにするためのものです。ただし、無制限に解除できると、取引の安定性が損なわれるため、一定の制限が設けられています。
解除できる期限
民法上は「相手方が契約の履行に着手するまで」手付解除ができます。履行の着手とは、たとえば、売主が引き渡しの準備(測量、解体、引っ越しなど)を始めた場合や買主が代金の一部を支払った場合などです。
しかし、「履行の着手」の判断は解釈の余地があるため、実務では、売買契約書に「手付解除の期日」を具体的に定めるのが、一般的です。たとえば、「契約日から2週間後まで」「買主のローン承認の日まで」などです。期日を過ぎると、手付解除はできなくなります。
手付解除をする場合の注意点
- 買主が解除する場合:手付金を放棄する。すでに支払った手付金は返還されない
- 売主が解除する場合:受け取った手付金に同額を加えた、倍額を買主に支払う
- 解除の通知は書面(内容証明郵便など)で行うのが、安全
- 手付解除の意思表示は期日内に相手方に到達する必要がある
- 解除によって、買主に損害(ローンの手数料など)が生じた場合の取り扱いを、確認する
とくに、売主が手付解除をする場合は倍返しの資金を準備できるか、買主との、関係に支障がないかを、よく考える必要があります。
手付解除の期日を過ぎたら
期日を過ぎた後に契約を解除したい場合は手付解除はできません。その場合は契約の違反による解除、または、合意解除となります。違約金(売買代金の10〜20%程度が一般的)が課される場合があります。
期日を過ぎた後でも、売主・買主の双方が合意すれば、契約を解除できます。ただし、手付金の取り扱い、解除に伴う費用の負担などを、書面で取り決める必要があります。詳しくは、契約の解除と違約金の項目をご覧ください。
手付解除をめぐる、トラブルの例
手付解除をめぐっては、次のようなトラブルが起こることがあります。
- 買主が「履行の着手」前であると主張するが、売主はすでに着手したと考える
- 売主が高く買う人が現れたため、手付解除を申し出たが、買主が納得しない
- 手付解除の期日の起算日(契約日か、手付金の授受日か)が曖昧
- 解除の意思表示が期日内に到達していない
これらを防ぐためにも、契約書に手付解除の期日・方法を明確に記載しておくことが重要です。詳しくは、手付解除期日を巡るトラブルの項目もご覧ください。
売主が契約を解除したくなったとき
売主が契約を解除したくなる理由として、「より高い価格で買う人が現れた」「家族の事情が変わった」などが、あります。この場合は手付金の倍額を準備して、期日内に解除を申し出ることが可能です。
ただし、売主の都合による、解除は買主に大きな、影響を与えます。住宅ローンの手続き費用、引っ越しの準備などが、すでに、進んでいる場合は損害の賠償を求められる可能性もあります。解除する前に不動産会社や弁護士に相談しましょう。
モデルケース:手付解除の期日がトラブルを防いだ例(イメージ)
Vさんが、物件を売却する契約を結んだとき、契約書に「手付解除期日は契約から10日以内」と明記しました。契約から15日後に買主から「やはり、購入をやめたい」と連絡がありました。
手付解除の期日が過ぎていたため、買主は手付解除を行えず、違約金の対象となりました。期日が明確に定められていたため、双方が冷静に話し合い、違約金の一部を支払うことで、合意しました。契約書の期日がトラブルを整理する基準となった例です。