取得費とは
取得費とは、売却する不動産を購入、または、建築した際にかかった費用のことです。譲渡所得を計算するとき、売却価格から差し引きます。取得費が大きいほど、譲渡所得は小さくなり、税負担は軽くなります。
取得費には、購入代金だけでなく、取得のために直接かかった費用も含まれます。
取得費に含まれるもの
- 購入代金(土地・建物)
- 購入時の仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 所有権移転登記の登録免許税・司法書士報酬
- 不動産取得税(支払った場合)
- 土地の造成費・埋立費、整地費用
- 建物の建築代金(建築した場合)
- 借入金の利子のうち、使用開始前の期間分(一部)
一方、購入後に支払った、固定資産税や住宅ローンの利息などは、原則として、取得費に含まれません。
建物の取得費と減価償却
建物は時間の経過とともに、価値が減少すると考えられるため、取得費から減価償却費相当額を差し引きます。計算式は次のとおりです。
建物の取得費 = 購入代金(建築代金)−(購入代金×0.9×償却率×経過年数)
償却率は建物の構造と耐用年数によって決まります。居住用の建物は法定耐用年数を1.5倍して、計算します(たとえば、木造は22年の1.5倍で33年)。詳しくは、減価償却費の計算(建物)の項目をご覧ください。
取得費がわからない場合
購入時の売買契約書や領収書が見つからない場合は売却価格の5%を、取得費とみなす「概算取得費」を使えます。たとえば、3,000万円で売却した場合、概算取得費は150万円です。
ただし、昔に購入した不動産で実際の取得費が売却価格の5%より高い場合、概算取得費を使うと、損をします。購入時の資料はできる限り探しましょう。資料がない場合でも、当時の分譲会社、不動産会社、金融機関の記録などから、確認できる場合があります。
相続した不動産の取得費
相続で取得した不動産の取得費は亡くなった方の取得費を引き継ぎます。亡くなった方が昔に購入した不動産は取得費が不明なことが多く、概算取得費を使うケースも多くあります。
また、相続税を支払った場合は相続から3年10か月以内に売却すると、相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。詳しくは、税理士にご相談ください。
取得費のよくある誤解と注意点
誤解1:「購入価格がそのまま取得費」。建物は減価償却費を差し引くため、購入価格より小さくなります。
誤解2:「リフォーム費用はすべて取得費に入る」。資本的支出(価値を高める工事)は取得費に含められますが、修繕(原状回復)は含められない場合があります。
誤解3:「資料がなければ、取得費はゼロ」。概算取得費(5%)を使えます。
税制は改正されることがあります。実際の申告・判断にあたっては、必ず、税理士や税務署に最新の内容をご確認ください。
モデルケース:資料を探して、取得費が増えた例(イメージ)
Kさんは、40年前に購入した土地を売却することになりました。購入時の資料が見つからなかったため、概算取得費(売却価格の5%)で計算するつもりでした。
しかし、念のため、当時の分譲会社に問い合わせたところ、購入時の契約書の写しが残っており、実際の取得費は売却価格の20%相当と判明しました。その結果、譲渡所得が大幅に減り、納税額も約300万円、減りました。資料をあきらめずに、探すことが大切です。
取得費に関する、実務上のポイント
取得費を正確に把握しておくことは税負担を左右する大きな要素です。まず、購入時の売買契約書は売却後の確定申告で必ず必要になる書類のひとつです。購入時から大切に保管しておくことをおすすめします。
また、建物のリフォームや増築にかかった費用は取得費に加算できる場合があります。リフォームの領収書や工事の契約書もできるだけ、保管しましょう。ただし、通常の修繕費や維持管理にかかる費用は取得費に含められないため、区別が必要です。
さらに、土地を購入した際に造成工事や擁壁工事を行った場合はその費用も取得費に含められます。これらの工事の記録が残っている場合は資料をそろえて、税理士に相談してください。