減価償却費の考え方
建物は年数が経つと、劣化し、価値が下がっていきます。この価値の減少を費用として、各年に分けて、計上する仕組みが、減価償却です。不動産を売却するときの、譲渡所得の計算では、建物の取得費は「購入代金 − 減価償却費相当額」で求めます。
土地は時間が経っても、価値が減らないと考えられるため、減価償却の対象外です。
計算式
居住用の建物の減価償却費相当額は次の式で計算します。
減価償却費相当額 = 購入代金(建築代金)× 0.9 × 償却率 × 経過年数
建物の取得費 = 購入代金 − 減価償却費相当額
0.9は残存価額が取得価額の10%であるとして、控除する割合です。経過年数は建物を取得した日から売却の日までの年数を6か月以上を1年、6か月未満を切り捨てて、計算します。
耐用年数と償却率
償却率は建物の構造に応じて、定められた、耐用年数で決まります。居住用の建物は法定耐用年数を1.5倍して、計算します。代表的な構造の耐用年数と償却率は次のとおりです。
- 木造:法定耐用年数22年 → 1.5倍で33年 → 償却率0.031
- 鉄骨造(骨格材の肉厚が4mmを超える):法定耐用年数34年 → 1.5倍で51年 → 償却率0.020
- 鉄筋コンクリート造(RC造):法定耐用年数47年 → 1.5倍で70年 → 償却率0.015
耐用年数の1.5倍で計算するのは、居住用で事業用に比べて、劣化の進み方が緩やかであると、考えられているためです。
計算例
購入代金が2,000万円の木造住宅を15年間、所有していた場合を考えます。
- 減価償却費相当額:2,000万円 × 0.9 × 0.031 × 15年 = 約837万円
- 建物の取得費:2,000万円 − 837万円 = 約1,163万円
購入代金から約837万円を差し引いた、約1,163万円が建物の取得費になります。所有年数が長くなるほど、減価償却費相当額は大きくなり、取得費は小さくなります。数字は説明のための、仮のものです。
土地と建物の価額の内訳
土地と建物を一括で購入した場合は購入代金を土地と建物に分けて、取得費を計算する必要があります。売買契約書に土地と建物の価額が別々に記載されていれば、その金額を使います。
記載がない場合は固定資産税評価額の比率で按分するなど、合理的な方法で分ける必要があります。消費税が建物にのみ、課税される点にも、注意が必要です。判断に迷う場合は税理士に相談しましょう。
よくある誤解と注意点
誤解1:「建物の取得費は購入価格と同じ」。減価償却費相当額を差し引く必要があります。
誤解2:「築年数が経った建物は取得費がゼロになる」。取得価額の10%(残存価額)は取得費に残ります。
誤解3:「土地も減価償却する」。土地は減価償却しません。
税制は改正されることがあります。実際の申告・判断にあたっては、必ず、税理士や税務署に最新の内容をご確認ください。
モデルケース:築年数による、取得費の違い(イメージ)
購入代金が同じ2,000万円の木造住宅でも、10年所有した場合と30年所有した場合では、取得費が異なります。10年の場合、減価償却費相当額は約558万円で取得費は約1,442万円。30年の場合は約1,674万円で取得費は約326万円です。
このように、所有期間が長いほど、取得費が小さくなり、譲渡所得が大きくなる傾向があります。3,000万円特別控除などの、特例の活用が重要になる理由です。
減価償却の計算で実務上、注意したい点
減価償却の計算で実務上、特に注意したいのは、「購入代金に含まれるもの」と「含まれないもの」の区別です。建物の購入代金には、消費税が含まれます。一方、土地には、消費税はかかりません。売買契約書に土地と建物の内訳が記載されている場合はその額を使いますが、総額しか記載されていない場合は合理的な方法で按分する必要があります。
また、リフォームや増築を行った場合はその費用が資本的支出に該当すれば、別途、減価償却の対象となる場合があります。ただし、通常の修繕費は対象になりません。リフォームの内容と金額を整理しておきましょう。
売却時には、これらの資料を税理士に提示すれば、より正確な計算が可能です。