指値とは何か
指値とは、買主が売り出し価格より低い金額を購入の条件として提示することです。たとえば、3,000万円で売り出している物件に対し、「2,800万円なら購入したい」と申し出るのが、指値です。
不動産の売買は定価のない取引であり、売り出し価格はあくまで、売主の希望価格です。買主は価格交渉ができるものと考えて、指値を入れることが一般的です。このため、売主はあらかじめ、指値が入ることを想定して、売り出し価格を設定したり、交渉の余地を残したりします。
指値が入るタイミングと流れ
指値は買主が購入したい意思を示す「買付証明書(購入申込書)」の中で提示されるのが一般的です。買付証明書には、購入希望価格、支払方法、引き渡しの希望時期などが記載されます。
不動産会社は買付証明書を売主に伝え、売主は条件を受けるかどうかを判断します。そのまま受ける、断る、あるいは、金額や条件を調整して、返答する(カウンター)のいずれかを選べます。合意に至れば、売買契約へ進みます。
指値への対応の考え方
売主は指値が入ったときにどう対応するかを、事前に考えておくことが大切です。
- 最低限、手元に残したい金額(ローン完済・諸費用・税金を考慮した下限)を決めておく
- 売却の期限がある場合は多少の値引きに応じて、早期成約を優先する
- 反響が少ない物件は指値でも、買主が現れたこと自体を貴重な機会と考える
- 人気物件では、指値に応じず、他の買主を待つ選択肢もある
値引き額の目安は物件や市況によって、異なります。不動産会社に周辺の取引事例を踏まえた、アドバイスを求めましょう。
指値以外の条件交渉
価格以外にも、交渉の対象となる条件があります。たとえば、引き渡しの時期、残置物の取り扱い、設備の撤去、測量や境界の確認の有無、契約不適合責任の範囲、手付金の額などです。
価格の値引きに応じにくい場合でも、引き渡し時期を柔軟にする、設備を残すなど、他の条件で調整することで、合意に至る場合があります。
指値に関する注意点
- 指値を受けた段階では、まだ契約は成立していない。正式には、売買契約の締結をもって成立する
- 他の買主からの申込みがある場合は不動産会社と優先順位を相談する
- あまりに極端な指値には、無理に応じる必要はない
- 口頭の合意だけでなく、条件は書面で確認する
指値の交渉は感情的にならず、数字と条件を整理しながら、冷静に進めましょう。
モデルケース:指値への対応で成約した例(イメージ)
売出価格3,200万円の戸建てに、買主から「2,900万円なら購入したい」という指値が入ったとします。売主はローン残債が1,800万円、諸費用や税金で約200万円かかる見込みで、手元に最低1,000万円は残したいと考えていました。
2,900万円で売れば、手取りは、約900万円となり、希望には届きません。そこで、売主は不動産会社と相談し、「3,050万円であれば、売却する」と返答しました(カウンター)。買主は検討のうえ、3,000万円まで引き上げて、再提示。売主は引き渡し時期を買主の希望に合わせることを条件に3,000万円で合意しました。
このように、指値は一度で決まるとは限らず、価格と価格以外の条件を組み合わせて、歩み寄ることで、成約に至る場合があります。あらかじめ、自分の下限と譲れる条件を整理しておくことが交渉の鍵です。
指値にまつわる、よくある誤解
誤解1:「指値が入ったら、必ず応じなければならない」。売主には、応じる義務はありません。条件が合わなければ、断ることも返答を調整することもできます。
誤解2:「値引きに応じる前提で売り出しを高く設定すればよい」。売り出し価格が高すぎると、そもそも反響がなくなる可能性があります。周辺の事例を踏まえた、現実的な設定が大切です。
誤解3:「指値は失礼な行為」。不動産の売買では、価格交渉は一般的な慣行です。感情的にならず、条件を整理して対応しましょう。