一物四価とは
日本の土地には、1つの土地に対して、目的の異なる、複数の価格が存在します。これを、「一物四価」(基準地価を加えて、「一物五価」)と呼びます。それぞれの価格は算定する機関と目的、時点が異なるため、同じ土地でも、金額が異なります。
4つ(5つ)の価格
- 実勢価格:実際の市場で売買される価格。需要と供給で決まる
- 公示価格(公示地価):国土交通省が毎年1月1日時点で公表。土地取引の指標・公共用地取得の基準
- 基準地価:都道府県が毎年7月1日時点で公表。公示価格を補完
- 相続税路線価:国税庁が毎年1月1日時点で設定。相続税・贈与税の基準。公示価格の約8割
- 固定資産税評価額:市町村が3年ごとに、評価。固定資産税などの基準。公示価格の約7割
それぞれの価格は公的な機関が定め、目的に応じて、使い分けられています。
価格の関係
一般に公示価格を100とした場合、路線価は約80、固定資産税評価額は約70が目安とされます。実勢価格は市場の状況によって、公示価格より高くなることも低くなることもあります。
目安として、「実勢価格 ≒ 公示価格 ≒ 路線価 ÷ 0.8 ≒ 固定資産税評価額 ÷ 0.7」という、関係をイメージすると、わかりやすくなります。ただし、これは、あくまで、概算であり、物件や時期によって、大きく異なります。
なぜ、複数の価格があるのか
複数の価格が存在するのは、それぞれの価格が異なる目的で設けられているからです。公示価格は土地取引の適正な、価格形成を促すため、路線価は相続税の公平な課税のため、固定資産税評価額は固定資産税の公平な課税のために定められています。
税の評価額が公示価格より低く設定されているのは、納税者の負担に配慮して、評価額に一定の安全率を見ているためです。
売却での、考え方
- 売却価格の基準は実勢価格(成約価格)
- 公示価格・基準地価は地価の動向・水準を知る参考
- 路線価は相続税・贈与税の計算、土地価格の概算の目安
- 固定資産税評価額は税額・登記費用の計算の基礎。売却価格の目安には、ならない
売主はこれらの違いを、理解したうえで、不動産会社の査定を検討すると、査定額の妥当性を判断しやすくなります。
モデルケース:一物四価を整理した例(イメージ)
Jさんの土地について、各価格を調べたところ、次のようになりました(1平方メートルあたり)。
- 公示価格(近隣の標準地):30万円
- 路線価:24万円(公示価格の約8割)
- 固定資産税評価額:21万円(公示価格の約7割)
- 実勢価格(近隣の成約事例):32万円
Jさんは、これらの価格を整理し、売り出し価格の設定の参考にしました。公的な価格は実勢価格の目安にはなりますが、最終的には、物件の条件で決まることを理解しました。
一物四価を不動産会社の査定と照らし合わせるコツ
不動産会社から査定額が示されたら、一物四価の観点で査定額の水準を確認してみましょう。たとえば、査定額が路線価ベースの価格や固定資産税評価額ベースの価格からあまりに、かけ離れていないかを、見ます。もちろん、実勢価格はこれらと、一致しませんが、極端な乖離があるときはその理由(物件の特性、需給の状況など)を尋ねる価値があります。
また、公示価格や基準地価の水準と比較して、査定額が高い場合は近年の地価上昇や物件の優位性が反映されているのかを、確認します。複数の価格を見比べる習慣が査定額を冷静に評価する力につながります。