遺産分割協議とは
被相続人が亡くなると、その遺産は相続人の共有状態になります。遺産を具体的に誰がどの財産を取得するのかを、決める手続きが、遺産分割です。相続人全員で話し合って、決める場合を「遺産分割協議」といいます。
遺言書がある場合は原則として、その内容に従いますが、遺言書がない場合や遺言書で指定されていない財産がある場合は遺産分割協議が必要です。
協議の進め方
- 相続人を確定する(戸籍を収集して、全員を確認する)
- 遺産の内容を調査する(不動産・預貯金・株式・負債など)
- 不動産の評価額を確認する(査定・路線価・固定資産税評価額)
- 分け方(現物分割・換価分割・代償分割など)を話し合う
- 合意に至ったら、遺産分割協議書を作成する
- 協議書に相続人全員が署名・実印・印鑑証明書を添付する
相続人の中に未成年者や判断能力が不十分な人がいる場合は特別代理人・成年後見人の選任が必要になります。
不動産の分け方
- 現物分割:不動産を特定の相続人がそのまま取得する
- 換価分割:不動産を売却して、代金を相続人で分ける(売却を前提とする場合)
- 代償分割:不動産を取得する相続人が他の相続人に代償金を支払う
- 共有:相続人が共有名義で取得する(将来のトラブルのリスクがある)
売却を前提とする場合は換価分割が一般的です。詳しくは、換価分割、代償分割の項目をご覧ください。
売却との関係
遺産分割協議がまとまっていないと、不動産の売却は進められません。相続人全員の同意がなければ、売却の手続きが、できないためです。
- 協議で売却する方針を決める(換価分割)
- 売却を担当する相続人を決め、その人名義で相続登記する
- 売却代金の分配方法を決める(法定相続分・合意した割合)
- 売却の準備(査定・不動産会社の選定)を並行して、進める
早い段階で不動産会社に相談し、不動産の評価額の目安を確認すると、協議が進みやすくなります。
協議がまとまらない場合
相続人間で意見が分かれ、協議がまとまらない場合は家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用できます。調停は調停委員が間に入って、話し合いを、進める手続きです。調停でまとまらない場合は審判で裁判官が分割方法を決定します。
調停・審判には、時間と費用がかかります。まずは、専門家(弁護士・司法書士・不動産会社)に相談して、解決策を探ることをおすすめします。
税金・期限との関係
- 相続税の申告期限:相続の開始を知った日から10か月以内
- 遺産分割が未了の場合:法定相続分でいったん、申告し、後で更正の請求ができる
- 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例:原則として、申告期限までに、遺産分割が必要(3年以内の分割見込書を提出すれば、後から適用できる場合がある)
- 相続登記の義務化:取得を知った日から3年以内。遺産分割が成立した場合は成立から3年以内
期限を意識しながら、協議を進めることが大切です。
モデルケース:換価分割で協議がまとまった例(イメージ)
Pさんと、妹・弟の3人は亡くなった母の実家を相続しました。誰も住む予定がなく、維持費の負担も重いため、不動産会社に査定を依頼しました。
査定額をもとに、3人で話し合い、実家を売却して、代金を3等分する、換価分割に合意しました。遺産分割協議書を作成し、相続登記を済ませたあと、売却を進めました。査定が協議の判断材料になった例です。
協議を円満に進めるための、実務上のコツ
遺産分割協議を円満に進めるためには、感情的な対立を避け、事実と数字にもとづいて、話し合うことが大切です。まず、遺産の一覧表(財産目録)を作成し、不動産の評価額の目安を共有します。評価額は不動産会社の査定や固定資産税評価額など客観的な資料を基準にすると、意見の食い違いが、減ります。
次に各相続人の事情(住居の有無・資金の必要性・不動産の管理の負担など)を率直に話し合います。たとえば、誰かが、実家に住み続けたい場合は代償分割を検討し、誰も住まないなら、換価分割が現実的です。第三者(司法書士・弁護士・不動産会社)に同席してもらうことで、冷静な、話し合いが、期待できます。
最後に合意した内容は必ず、遺産分割協議書に残します。口頭の約束だけでは、後でトラブルになるおそれがあります。