不動産売却大辞典|相続不動産編

相続登記の義務化や遺産分割、相続放棄、相続税の申告期限など、相続した不動産にまつわる制度・用語を15項目にまとめました。気になる言葉から読み進めてください。

相続登記の義務化

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません。正当な理由なく期限内に申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。この制度は2024年4月1日より前に発生していた相続にも適用され、一定の猶予期間が設けられています。相続した不動産を売却する際にも、前提として相続登記が完了している必要があるため、早めの手続きが望まれます。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、亡くなった方(被相続人)が遺した財産を、相続人全員で話し合い、誰が何をどのように取得するかを決める手続きです。不動産や預貯金、株式などの遺産は、遺言書がない場合、法定相続分どおりに機械的に分けられるわけではなく、相続人全員の合意によって具体的な分け方を決める必要があります。協議には相続人全員が参加しなければならず、一人でも欠けた状態で成立した協議は無効となります。不動産は現金のように単純に分割できないため、後述する代償分割・換価分割などの方法を組み合わせて検討することが一般的です。

遺産分割協議書

遺産分割協議書は、遺産分割協議で合意した内容を書面にまとめたものです。決まったひな形はありませんが、誰がどの財産を取得するかを具体的に記載し、相続人全員が署名・実印での押印を行い、印鑑証明書を添付するのが一般的です。この書面は、相続登記の申請時や、預貯金の名義変更・解約手続きの際に必要となる重要な書類です。後日の「言った・言わない」といったトラブルを防ぐ役割も果たすため、内容に誤りがないか慎重に確認して作成することが大切です。

法定相続分

法定相続分とは、民法で定められた、相続人ごとの遺産の取得割合の目安です。たとえば配偶者と子が相続人の場合は配偶者2分の1・子2分の1、配偶者と直系尊属(親など)の場合は配偶者3分の2・直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1が基本的な割合とされています。ただし、これはあくまで遺産分割協議が調わない場合などの目安であり、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合で分けることも可能です。不動産の分け方を検討する際の、ひとつの基準として理解しておくとよいでしょう。

代償分割

代償分割とは、相続人のうち一人(または一部)が不動産をそのまま取得する代わりに、他の相続人に対して法定相続分に相当する金銭(代償金)を支払うことで、公平を図る遺産分割の方法です。実家に住み続けたい相続人がいる場合など、不動産を売却せずに済むメリットがあります。一方で、代償金を支払う側にまとまった資金が必要になる点が課題です。不動産の評価額をめぐって相続人間の意見が分かれることもあるため、慎重な話し合いが求められます。

換価分割

換価分割とは、相続した不動産を売却して現金化し、その売却代金を相続人間で分け合う遺産分割の方法です。不動産は物理的に分けにくい財産であるため、公平に分配したい場合や、相続人の誰も自宅として使う予定がない場合に選ばれることが多い方法です。売却には仲介や買取といった手段があり、売却によって利益が生じた場合は譲渡所得税がかかることもあります。売却代金の分け方や、売却にかかる諸費用の負担についても、あらかじめ相続人間で取り決めておくとスムーズです。

共有名義のリスク

相続した不動産を、複数の相続人の共有名義のまま相続登記することがありますが、これにはいくつかのリスクが伴います。不動産を売却・賃貸・大規模なリフォームをする際には共有者全員の同意が必要になるため、意見が一致しないと身動きが取れなくなることがあります。また、共有者の一人が亡くなると、その持分がさらにその相続人へと引き継がれ、権利関係が世代を追うごとに複雑化していく可能性もあります。将来的なトラブルを避けるためにも、共有名義とする場合は慎重に検討し、可能であれば単独名義や前述の代償分割・換価分割を検討することが望ましいとされています。

相続放棄

相続放棄とは、相続人が被相続人の財産(プラスの財産・マイナスの財産の両方)を一切受け継がないことを家庭裁判所に申述する手続きです。被相続人に多額の借金があった場合や、老朽化した空き家など管理・維持が負担になる不動産を相続したくない場合などに選択されます。相続放棄は、自己のために相続が開始したことを知った時から原則3ヶ月以内に行う必要があり、この期間(熟慮期間)を過ぎると、原則として単純承認したものとみなされます。なお、相続放棄をしても、次の相続人が管理を始めるまでの間、一定の管理責任が残る場合があるため注意が必要です。

限定承認

限定承認とは、被相続人の財産のうち、プラスの財産(資産)の範囲内でマイナスの財産(債務)を承継するという相続の方法です。被相続人にどの程度の借金があるか分からない場合などに、相続人が想定外の負債を背負うリスクを抑えられる制度です。ただし、限定承認は相続人全員が共同で行う必要があり、家庭裁判所への申述や財産目録の作成など、相続放棄に比べて手続きが複雑になる点に留意が必要です。こちらも原則として、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。

特定空き家

特定空き家とは、空家等対策特別措置法にもとづき、市区町村から指定される、放置すると危険な状態にある空き家のことです。倒壊のおそれがある、著しく衛生上有害となるおそれがある、適切な管理が行われず著しく景観を損なっている、といった状態にある空き家が対象となります。相続した空き家が特定空き家に指定されると、自治体からの助言・指導、勧告、命令という段階を経て、固定資産税の住宅用地特例が解除され税負担が増えたり、最終的には行政代執行によって強制的に解体され、その費用を所有者が負担することになったりする場合があります。相続した実家を空き家のまま放置している場合は、早めに活用や売却を検討することが望ましいでしょう。

空家等対策特別措置法

空家等対策特別措置法(空家法)は、増加する空き家問題に対応するために制定された法律です。市区町村が空き家の実態調査を行い、適切な管理が行われていない空き家を「特定空き家」等に指定して、所有者に対して助言・指導、勧告、命令を行うことができる仕組みが定められています。2023年の改正では、特定空き家になる前段階の「管理不全空家等」という区分が新設され、より早期の段階から自治体が関与できるようになりました。相続した空き家の所有者にも適切な管理責任が求められる法律であり、活用・売却・解体などの対応を検討するきっかけとして理解しておくとよいでしょう。

相続税の申告期限

相続税の申告と納税には期限があり、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。この期限内に、相続財産の評価や遺産分割協議を終え、申告書を作成して税務署に提出しなければなりません。不動産の評価や遺産分割協議に時間がかかることも多く、期限に間に合わないと延滞税等が発生する場合があるため、早めに専門家(税理士)へ相談し、余裕を持って準備を進めることが重要です。なお、相続税には基礎控除額があり、遺産総額がその範囲内であれば申告が不要な場合もあります。

準確定申告

準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)が生前に得ていた所得について、相続人が代わって行う所得税の確定申告のことです。被相続人が個人事業主であった場合や、不動産収入・給与所得以外に一定の所得があった場合などに必要となります。準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内という、通常の確定申告よりも短い期限が定められている点に注意が必要です。相続人が複数いる場合は、原則として連署で申告するか、各相続人が個別に申告したうえで、その内容を他の相続人に通知する必要があります。

遺言書(自筆証書・公正証書)

遺言書は、被相続人が自身の財産の分け方について生前の意思を残しておくための書面で、代表的なものに自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、遺言者が自筆で作成する方式で、手軽に作成できる一方、法律で定められた要件(財産目録を除き全文自書が必要など)を満たしていないと無効になるリスクがあります。また、法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用しない場合は、相続開始後に家庭裁判所での「検認」という手続きが必要です。公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため方式の不備が生じにくく、原本が公証役場に保管される安心感があり、検認も不要とされています。有効な遺言書があれば、遺産分割協議を経ずに不動産の名義変更を進められる場合があります。

遺留分

遺留分とは、一定の範囲の相続人(配偶者・子・直系尊属)に対して、法律上最低限保障されている遺産の取得割合のことです。被相続人が遺言や生前贈与によって、特定の相続人や第三者に遺産の大部分を渡すと定めていた場合でも、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(遺留分侵害額請求)。この請求権には、相続の開始及び遺留分の侵害を知った時から1年以内(相続開始から10年以内)という時効がある点にも注意が必要です。不動産が遺産の大部分を占める場合、遺留分をめぐる話し合いが複雑になりやすいため、専門家に相談しながら進めることが望まれます。

ご利用にあたって

本ページの内容は一般的な相続・不動産制度に関する情報です。相続の状況は個々のご家庭によって大きく異なり、法令も改正される場合があります。個別のご判断は必ず弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご確認ください。

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