引き渡しとは
引き渡しとは、売主が買主に対して、売買の目的である不動産を使える状態で明け渡すことをいいます。具体的には、建物の鍵を渡し、所有権移転登記の手続きを行い、設備の取扱説明書や保証書、図面などの書類を引き渡します。
引き渡しは、通常、買主が残代金を支払う決済と同時に行われます。この時点で不動産に対する、さまざまな権利と責任が売主から買主へ移ります。
引き渡しで移るもの
- 所有権:登記の手続きにより、買主の名義となる
- 占有:物件を実際に管理・使用する権利が買主に移る
- 危険負担:引き渡し後に天災などで物件が損傷した場合の責任は原則として、買主が負う
- 公租公課(固定資産税など):引き渡し日を基準に日割りで精算する
- 管理費・修繕積立金(マンション):引き渡し日を基準に日割りで精算する
引き渡し前に物件が売主の責任でない原因で滅失・損傷した場合の取り扱いは、契約書の条項(危険負担)によって定められます。
引き渡しに向けて、売主が行う準備
引き渡しまでに、売主は物件を空にし、清掃をして、買主がすぐに使える状態にしておきます。家財道具や不用品はすべて撤去します。庭の草木が茂っている場合は整備しておきます。
設備(給湯器・エアコン・照明器具など)の動作確認を行い、故障している場合は契約時に告げた内容に沿って、対応します。契約書で残すと決めた設備は撤去しないよう、注意しましょう。
鍵はすべて(スペアキーを含む)、買主に渡せるよう、集めておきます。また、設備の取扱説明書、保証書、建築関係の書類も一緒に引き渡します。
引き渡し猶予とは
引き渡し猶予とは、売買契約や決済の後も一定期間、売主が引き続き物件に住み続けることを買主が認める特約です。新居が完成するまでの期間や引っ越しの準備のために使われます。
猶予期間中の光熱費・固定資産税・火災保険の負担や物件が損傷した場合の責任などを、契約書に明記しておくことが重要です。猶予期間が長い場合は買主の資金計画(ローンの実行時期など)への影響も考慮する必要があります。詳しくは、引き渡し猶予の項目をご覧ください。
引き渡し時の確認(立ち会い)
引き渡しの前後に買主が物件の状態を最終確認する立ち会いが行われる場合があります。契約時の説明と現状に相違がないか、設備が正常に動作するか、売主が残すと約束したものが残されているかを確認します。
この場で不具合が見つかった場合は補修や価格調整などを、協議します。売主は契約書や物件状況報告書に記載した内容と現状が一致しているかを、事前に確認しておきましょう。
引き渡し後に売主が気をつけること
- 契約不適合責任の期間中は買主からの連絡に対応する
- 郵便物の転送手続き、住所変更の手続きを済ませる
- 固定資産税の納税通知書が売主宛に届いた場合の精算を確認する
- 譲渡所得が発生した場合は翌年に確定申告を行う
- 火災保険・地震保険の解約手続きを、行う
引き渡しは、売却の終わりではなく、その後の手続きへの、出発点でもあります。
モデルケース:引き渡し猶予を活用した例(イメージ)
住み替えを予定するCさんは、新居の完成が現在の家の決済日より2週間遅れる見込みでした。仮住まいを探す手間と費用を避けるため、買主と相談して、「引き渡し猶予」の特約を結びました。
契約書には、猶予期間を決済後2週間と定め、その間の光熱費と火災保険の負担、物件が損傷した場合の責任、猶予期間を過ぎても退去しない場合の違約金を明記しました。買主も入居時期に余裕があったため、了承しました。
この例のように、事情に応じた特約をあらかじめ契約に盛り込むことで、売主・買主の双方にとって、負担を減らすことができます。ただし、猶予期間の長さや、条件は買主の合意が必要であり、無理のない範囲で交渉することが大切です。